「家族と結婚の歴史」_Posted at 03:07

本書は
古代から現代にかけて
5人の女性がオブニバス形式でつづる
主に家族と結婚にターゲットを当てた
日本女性の歴史の本だ。


ジェンダーバイアスによる
女性の諸権利の欠如は
古代からその形態が見られ
根強く蔓延ってきたと思っていたが
本書を読んみながら歴史を辿ってみると
その実情は意外と異なっている。
古代では
恋愛・性関係・結婚が
曖昧な形で共存した風潮も
(対偶婚に代表される恋愛観とも言える)
影響したのだろうか、
求婚権・離婚を
自分の意思に拠って決定できる
性の自主決定権、
そして財産所有権も
それに付随するかたちで
女性にも付与されていた。

確かに
時代に下るにつれて
女性の権利の幅も狭められていくのは
周知の通りだが、
それでもまだ江戸終期までは
僅かながら認められる。
本書を読む限り
事態が一変するのは近代に入ってからで、
大工場制による生産は
生理・妊娠のない
均一でしかも持続可能な労働力を要求し
女性の社会参加を実質的に排除した。
議会政治は
女性の政治活動・参加を徹底的に制限し、
民法の制定によって
「家」制度を確立し「家父長制」という
江戸時代の封建道徳の再生産を堂々と行い
国民に刷り込んだ。
国民国家の必須条件として
内外に高らかに謳われた「人権思想」は
以上2点の視点から
「妻(女)は社会的にも家庭内でも」
「無能力者とみなされた」ため、
フランス「人権宣言」と同じく
「生まれながらにして男である」者にのみ
適用されるものであった。



従って、
現代に見られるような
男女別ライフコース・性別役割分業は
この時代に確立されたものと
断言してよいだろう。




「近代(性)を疑う」ことの意義は
女性史にこそ当てはまる。