『涙女』_Posted at 02:02

※ネタバレレビューです。


バイト先でいつだったか、
夫を事故で亡くした
妻が見よう見まね悪戦苦闘しながら
夫の職業である乗り合いバス運転手になる
という香港映画を見た。

逞しい妻という描写は
万国共通なのか?
これが「涙女」を観終わった時の印象だ。

毎日マージャン賭博に明け暮れる夫ゲンのために
毎朝スラム街から北京へ
グイは違法DVD(V-CD)を売りに出てたが、
とあるきっかけで
葬式に乗り込んで
喪主と
一緒に「泣く」ことを商売にする
「涙女」になる。

相手の不幸に漬け込んで、
また
葬式を盛大に執り行いたい
依頼者の見栄を逆手にとって
「金を巻き上げている」グイが、
本物の「涙女」になれたとき
彼女の身に何が起きたのか?
ラストシーンの
彼女が哭きながら唄う
エレジー(哀歌)が全てを物語っている。


彼女が打ち崩されたとき、
手にはあれほど欲しいと思っていた
一杯の札束。
拠り所を失った瞬間、
彼女が求めていたものが
一瞬にして価値を失う。
何て皮肉なんだろう。

むしろ欲に満ちた
俗物っぽい人間の方が
熱い血潮がきっと流れている。
私にはグイの姿がそう映った。


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