「 「おたく」の精神史 一九八〇年代論」_Posted at 10:32

新書とは名ばかりのボリューム。
取り扱っているテーマもかなりのボリューム。
いったい
どこから書き始めたらいいのか…。

この本は
著者が主にライター業に奔走していた80Sを
サブカル、思想・言論、政治社会と
様々な切り口から考証した史論集。


論を進めていく上で軸となっているのは、
「おたく」文化に関与した彼の回想と
その産物と「される」宮崎勤である。
80Sはエロ劇画・本
90Sはエヴァンゲリオン酒鬼薔薇聖斗
という切り口で論じているのは興味深い。

『メディアが幻想を引き受け』
そのエネルギーが「実」世界を
仮想現実化させる。
幻想が資本社会を
確実に席巻していく中で
『都市は記号化されて』
虚構としての伝説を生み出す
本拠地となる。
人々はそこへ集まり
現実と仮想の
境界線が曖昧になっていく
享楽的な世界を
疑似体験している(いた)に
違いない。
以上の言説は
聞き飽きるくらい
すでに言い古されたものだ。
しかし、
サブカルチャーが興隆し始めた
80Sの「個人」史を基に
検証しているという意味で
この本を評価できよう。

我々を飲み込もうとしているくらい
氾濫している情報の海を選り分け
取捨選択できるのか?
また我々が
既存のシステムを破壊し
再構築し成熟したものにできるのか?
考える上で参考になるであろう一冊。