『演歌と日本人』_Posted at 04:17

演歌は日本人のウエットな心理が影響していたと
以前から思っていたが、
この本を読んでその思いをさらに強くした。

演歌は「怨」歌の側面をも持ち合わせているが、
「感情の発酵」と関係があると山折は指摘する。
高温多湿のジメジメした気候の
アジア圏に広く認められる発酵食品。
その生成過程と
演歌の「怨」のイメージに共通点を見つけている。
内面的で引篭もりがちで
不の感情を表に出さずに
次第に腐敗させていくで醸成させていく
臭/醜の部分にあると。



同時に彼は
「日本から単調が消える」という指摘もしている。
子守唄をきいた
子供が泣き出すのが増えている理由を
TVのコマーシャルに流れる音楽に単調が少なく
「音感教育」の刷り込みが
見えないところで行われているからと
藤原信也氏の説を引いているが、
先頃読んだ「演歌のススメ」でも
それに触れていて、
これによると
童謡を作曲する際に
幼児の「情操」に悪影響を及ぼすからと
童謡に短調が避けられた経緯があるという。
子供から短調を避けようとする、
あるいは子供がはねつけてしまうその裏側には、
そのサウンド
陰湿で忌み嫌われるべき要素があるのだろうか?
だとすれば、
演歌に短調が選ばれる
補助的な根拠の1つにできよう。



美空ひばりの人間像を周縁として
演歌論全体に手を伸ばしているが、
その論の展開に若干飛躍があるので
どちらかに絞っても良かったのでは。
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