『どうにもとまらない歌謡曲』_Posted at 03:33

音楽は目を閉じていても
耳に入り込んでくる。
文字が読み書きできなくとも
歌詞の意味を理解できるし、
何度も聞き歌うことで
脳裏に焼きついてしまう。
そのことから
戦時中に国民統制の一つの手段として
歌が利用されたのは有名な話である。
また体制を批判する側にも
歌を歌い一体感を共有することで
志を一つにしたりする。
歌にはそれだけの浸透力があるのだ。
筆者はそうした歌の力に着目し
本書は70年代に
年齢・性別問わずに
幅広く親しまれたメディア、
謡曲にスポットをあてて
主にジェンダーの視点から
歌詞がどれだけの
「政治力」を聞き手に
及ぼしてきたかを論じている。


例えば
「女々」しさを排除した
男たちの連帯歌(♪宇宙戦艦ヤマト)と
化粧品CMに代表さえる
男性を翻弄する「強い」女を歌った歌
(♪燃えろいい女)
に代表される
正-反という比較的可視化される関係は
予想できたが、
70年代の歌謡曲
性そのものの枠を根本から無効化する
挑発的な試み
(♪透明人間や♪モンスター)
をしていたと指摘している。

非常に斬新な切り口であり、
本書の面白さはそこに集約されている。


ぜひ必読!!!
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